私の考える本当の歯磨き指導(TBI:Teeth Brushing Instruction)

私の考える本当の歯磨き指導(TBI:Teeth Brushing Instruction)
2024/01/29

歯磨き指導TBIとは、患者さんが自宅でセルフケアを行う場合に、歯ブラシや歯間ブラシ、フロス等を使用してプラーク(歯垢)をしっかりと除去できるようになることを目的として、患者さん一人一人に適した正しいブラッシング方法を歯科医師または歯科衛生士が指導することを言います。

まず、なぜ歯磨きをしなければならないのでしょうか?面倒くさいですよね。食後、歯磨きをしないでよいならそれにこしたことはないと思いませんか?でも、ほとんどの方が食後に歯磨きをしますよね。それには大切な訳があるからです。

皆さんご存じのように、食べているものは加工食品や精白したものが多いですよね。白米にはほとんど繊維成分がありません。うどんやパスタは炭水化物ですが、ほとんど繊維が含まれていません。ビスケットやクッキーなどは歯によくくっつきます。しかも甘いですよね。炭水化物と聞くと栄養素の一つと思ってしまいます。炭水化物は、糖質と食物繊維からなっています。食物繊維をあまり含んでいない炭水化物は甘くはありませんが、ほとんど砂糖と同じなのです。私はそんなものではなく、お肉や魚、野菜をたくさん摂っているから、大丈夫と思っている方も、なにがしか炭水化物を含んだものを食べています。そういったものが食べたら歯にくっつくのです。お口の中は、細菌だらけなので、虫歯を作ったり、歯周病の原因となる悪い細菌の餌になります。そうして、歯磨きをしても磨き残しがあると虫歯になり歯ぐきから出血したり膿が出たり、口臭の原因にもなります。だから、歯磨きをしなければならないし、歯磨き指導を受けて、自分に合ったブラッシング方法を身につけなければならないのです。

ある実験結果があります。患者さんを、プラークは除去せず歯磨き指導だけ、歯磨き指導をしないでプラークの除去だけをする、プラーク除去をして歯磨き指導を行う3つのグループに分けて、その後の患者さんのお口の衛生状態を比較するというものです。まず一番良かったのがプラークを除去し歯磨き指導を受けたグループです。これは、想像がつきますね。次に良かったのはどのグループだと思いますか。プラークの除去はせずに歯磨き指導をしたグループです。そして、一番良くなかったグループは歯磨き指導をせずにプラークだけを除去したグループだったのです。なるほどと思わせる結果ですね。この結果からも、歯磨き指導がいかに大切かがお分かりになっていただけると思います。

歯磨き指導がいかに大切かということを前提にお話をしていきます。虫歯や歯周病は、自己責任の病気だと考えられています。私は、食べるものに気を配り、正しいブラッシングをすれば大体の虫歯や歯周病は防げると思っています。そのことを患者さんが自覚しているかどうかだと思います。患者さんのセルフケアーだけではプラークコントロールは難しく、歯科医院でのプロフェッショナルケアーが必要になってきます。歯科医院で、セルフケアーだけでは残ってしまうプラークを取ってもらい、ブラッシング指導を受けて、自分の癖やいつも残りやすいところ指摘してもらうのです。それを継続していくことが、自分の歯を守り、お口の中から体全体の健康を守っていくことにつながるのです。

そこで、次の画像を見てください。小学生です。このケースは染め出しをしています。この小さな患者さんの赤く染め出されたところをきれいにするのは、エアーフローを使えば簡単にできます。それはほんの一時的なことです。そして歯磨き指導をすれば、この子の場合口の中の衛生状態は改善するでしょうか。それはないと思います。モチベーションを上げてどんなに熱心に指導しても効果は出ないと思います。この子が虫歯になっても自分が悪いからということはできません。歯並びが悪い状態で、いくら歯磨き指導をしても効果は出ません。まずこのような発達途中のお子さんは成長を考慮して、矯正治療をして歯磨き指導をするのです。歯ブラシが当てやすい環境を作って大切なことです。スクリーンショット (133).png

次にお見せするのは、大人のケースです。これだけ凸凹していると既製の歯ブラシだけで全体を磨き上げるのはとても難しいと思います。特殊な形態のブラシを使ってきれいにしていかなければなりません。歯磨き指導もとても複雑になります。患者さんも複雑すぎて時間もかかります。大人の場合でも歯磨き指導をして効果が上がるお口の環境、すなわち歯並びの改善してあげることが一番大切だと思います。このような歯並びが凸凹した環境では、虫歯になりやすい、歯周病を悪化させやすくなります。それに、治療も難しく不正確になります。歯並びが整っていると詰めやすいのですが、入り組んでいると削るのも不正確になりますし、詰める治療もムラが出たりバリが出来て、その部分にプラークが溜まりやすくなります。歯石を除去するのも器具が届かなかったりします。

スクリーンショット (134).png

歯並びが凸凹しているのに、今は噛めるし痛いところはないので歯並びは気にしないという患者さんがいます。みと歯科・矯正歯科では、口腔内スキャナーiTeroを使って、3Dでお口の画像を見ることが出来ます。いつも鏡の前で見ている歯並びとは違う自分を発見することが出来ます。iTeroの3Dの画像をいろいろな角度、方向から見ると自分の歯並びはこういう風になっているんだと良くわかっていただけると思います。

歯磨き指導は、毎日できる自分に適した正しいブラッシングをすることのできる環境を整えることから始まると思います。