インビザライン治療 ビフォーアフター その5 上顎前突

インビザライン治療 ビフォーアフター その5 上顎前突
2024/02/ 6

今回は、上顎前突いわゆる出っ歯の症例を紹介します。この症例は、まだ終了はしていませんが治療の考え方を紹介します。

最初の画像を見ると、確かに上顎の前歯が前に出ていて、すごく出っ歯に見えます。この歯の画像だけを見るとさぞかし横から顔を見る(プロファイルといいます)と唇が鼻の先と同じくらいに出ていると想像してしまいますが、そうではありません。ここではお顔そのものはお見せできませんが、唇はイーライン(鼻の先端と顎の先端を結んだ線をいい、この線の内側に唇が入っていると横顔がいいと言われます)の内側に入っています。この患者さんは、前歯に角度がついて前に出ているために出っ歯にみえるのです。

スクリーンショット (135).png                     通常の咬み合わせ

上顎前突は、本当に上顎が出ていて出っ歯の場合と、下顎が引っ込んでいるために上顎が出ているように見える場合があります。上顎と下顎の相対的な位置関係で出っ歯に見えるのです。

iTeroで普通に咬んでもらった画像と下顎を前に出してもらった画像を見てください。下顎を前に出して咬んでもらうと前歯は当たってきますが、奥歯が浮いてきます。これを治療に利用します。奥歯が浮いて空いた分、奥歯を上げて咬めるようにすると、奥歯も前歯も咬めるようになります。一番奥の歯が、咬み合わせの面で当たってなく、すれ違いに咬んでいますのでこれも改善しなくてはなりません。この咬み合わせを治すと咬み合わせが高くなるのでそれだけでも下顎が前に出てくる可能性があります。そして空いたかみ合わせを治すのです。

スクリーンショット (137).pngのサムネイル画像                    下顎を前に出した咬み合わせ

横から撮影した頭部の規格写真(セファロといいます)で通常の咬み方のセファロと下顎を前に出したセファロを重ねてみても、プロファイルは変わりなくイーラインの中に入っています。この患者さんは、下顎が奥に下がっているタイプの出っ歯ということになります。

スクリーンショット (136).png

               通常の咬み合わせと下顎を前に出した咬み合わせのセファロの重ね合わせ

そこで、下顎を前に出した状態でクリンチェック(治療計画)を作ります。現在の咬み合わせの状態から歯を動かすのではなく、こういう咬み合わせになって欲しい状態で歯を動かしていきます。奥のすれ違いになった歯を改善したり、真ん中の奥歯を上げて咬み合わせを作り、上下に波打った下顎の咬み合わせの平面を平らにしたり、上顎前歯の角度を変えたりして歯並びを整えていきます。

スクリーンショット (138).png                    下顎を前に出した状態からのクリンチェック

スクリーンショット (139).png                    矯正後のシミュレーションクリンチェック

(一度のマウスピース終了後でシミュレーション通りには改善しないことが多いです。インビザライン治療には様々なコースが設定されており、そのコースによりマウスピースの数、マウスピースを追加で作ることのできる回数、治療期間・価格が設定されています。どのコースを選択するかは、症例により患者さんの意向を考慮し、担当医と相談して決めます。)

下顎が後ろに引っ込んでいると診断せず、上顎が出ていると診断すると、上顎の小臼歯を抜歯して、上顎前歯を引っ込めようとするかもしれません。歯と上下顎の咬み合わせだけを見るとこのように診断しています。

セファロ写真を撮影し、分析をして評価・診断がとても大切になってきます。