どうして矯正治療をするの?大人編

どうして矯正治療をするの?大人編
2024/03/20

どうして大人になって矯正治療が必要な方がいるのでしょうか?以前パノラマレントゲンやiTeroのスキャン画像を見せて、矯正治療をすすめた患者さんがいました。その方は高校生だったので保護者の方が付き添いでいらしてました。私が矯正治療をすすめたところ、この子は食事もできているし、特に不自由なく生活しているので、歯並びの矯正治療は必要ありません、と言われたことがありました。なるほど!と思いました。それ以上は話が出来ませんでした。

それでは、どうして矯正治療が必要な方がいらっしゃるのでしょうか。出っ歯が気になったり、凸凹してるのが気になったり、受け口が気になるとか、審美的なことが主な理由だったらなるほどと思いますね。歯並びが悪いために、よく噛めないということもありますが、審美的な理由にしても咬み合わせの問題にしても主観的な要素がとても大きいので、気にしていない方にすすめる場合にはとても気を使います。

歯並びが悪いと、虫歯になりやすく、歯ブラシが届きにくいところに歯垢が溜まったりして歯周病を起こしたり、悪化させたりします。治療も大変難しくなります。歯並びが悪く歯が重なっていたりすると、虫歯を取り残すこともありますし、きちんと詰めることが出来ません。根の治療もうまくいき被せることになっても歯並びをそのままで被せても上手くいくはずもありません。歯周病にしても同じです。歯周病の原因は、歯垢とそれを餌にしている細菌です。歯列不正は、歯周病の誘因になりますし、治療の妨げになります。むし歯と歯周病を考えただけでも、歯列矯正は必要だと分かります。歯並びの状態は今だけの話ではありません。歯並びを含め口の中の状況は歳を重ねるごとに変わっていきます。歯並びは悪く、今虫歯もなく、歯周病はなくても将来はどうなるかはわかりません。iTeroのスキャン画像を見て、上顎と下顎をそれぞれ裏から見たり、真上から見たり、いろんな角度から見て初めて自分の歯並びの良し悪しに気づきます。いつもは鏡に映る正面だけからしか見ていないので、奥歯の歯並びの凄さに気づくことが出来ません。

ここまでは、歯並びが悪いことによる不具合や支障について見てわかる部分の話をしてきました。なるほどと思いませんでしたか。

そこで、図Ⅰを見てください。噛むと歯列には奥歯から順に咬合力が加わってきます。歯並びがガチャガチャだと加わる力の方向がまちまちです。ずれているとますますずれていくことになります。

スクリーンショット (180).png                     図1

図1の右側のようにきれいに並んでいると後方からの力は歯並びに沿って前方へ伝わっていき前歯部で相殺されます。これによって歯並びがずれにくいとか舌がきれいな形に保たれるとか口の周りの筋肉のバランスがよくなります。歯と歯が並び接触している点をコンタクトポイントといいますが、矯正をして歯並びをよくするということはこの連続したコンタクトポイントを獲得するということなのです。歯の根には歯根膜といってとても重要な組織があります。

スクリーンショット (182).png                         図2

歯根膜のセンサーに伝わった信号が脳に行き、食感などを感知しています。(図2)

ここで大切なことは、コンタクトポイントが図1の右側のように力の方向が連続しているかどうかです。横の方向だけでなく咬む力の方向は縦に加わりますが、歯並びが悪く縦横の咬む力がばらばらだとその歯根膜の信号が脳に伝わることになります。舌や口の周りの筋肉の形態や機能に影響を及ぼすことになります。例えば、一番奥の歯が咬み合わせの面同士で咬みあわず、すれ違っているとします。(図3の青い矢印)下の奥歯の表側(頬側)の面と上の歯の裏面(舌側面、口蓋側面)が咬んでいます。咬む力がまず前方に伝わりません。咬むたびに、上の歯には外側に力が加わり、下の歯には舌側に倒す力が加わることになります。下顎は筋肉で頭につながれたブランコのようなものです。咬む面(咬合面)で咬んでいれば、咬んだままでも自由に左右に動きますが、このようにすれ違っていると咬み合わせがロックされてしまします。図4の矢印で示した前歯でも動きがロックされてしまします。この咬む力で顎そのものも動かしてしまします。顎関節にも影響が出てきます。歯周病はサイレントキラーと言われるように、強く痛みが出ないうちに進みます。顎の関節も同様に極端な痛みが出てくることは稀ですから、ついつい見逃してしまいがちです。

このように歯列矯正をするということは、審美的な要求に応えるだけでなく、歯根膜で感知した信号を脳に伝えるという大切な役割があります。

ぜひ、この記事を読まれている方は、iTeroでお口の画像をとり、顎関節まで撮影できるパノラマレントゲン写真を撮って左右の関節の形や大きさを確認してみてはどうでしょうか。

図3                      図4

スクリーンショット (183).pngスクリーンショット (184).png

                                                                                                         

資料出典;図1、図2はウミガメ株式会社運営のマウスピース矯正スタディーグループD/NEXセミナー資料