どんな歯列不正があるの?
大人で、不正咬合といえば、次にあげる6つが代表的だと思います。(図1)
完璧な歯並びの人はとても稀で、たいていはどれかに当てはまるのではないでしょうか。
それでは、一つ一つ見ていきましょう。
① 受け口(下顎前突)(図2)
受け口は下顎前突といい、あたかも下顎が前に出ているイメージがあります。皆さんご存じかどうかはわかりませんが、昔アントニオ猪木というプロレスラーがいました。検査したわけではないので確かなことは言えませんが、彼は、下顎が大きくて突出していたと思われます。こういうタイプはとても稀な下顎前突です。日本人の場合は、ほとんどの場合が上顎の劣成長といって、混合歯列から永久歯列に代わる上顎の成長期に鼻呼吸ができないとかの理由で、上顎骨がうまく発育できずに受け口になったと考えられています。図2の右にある図は、人間の組織、部位別の成長曲線で、スキャモンの成長曲線といいます。これによると上顎骨の成長と下顎骨の成長には時間差があって、上顎が成長した後に下顎が成長します。
受け口が、通常の矯正治療でできるかどうかは、切端咬合(上顎と下顎の前歯が先端で咬み合わせられる)できるかどうかに左右されます。
② 開口・オープンバイト
図3のように前歯~臼歯部にかけて咬みあわせられない状態です。うどんなどの麵などを咬みきれない状態です。今までは、咬めていたのに親知らずがあって、奥歯を押して奥歯が手前に傾いてくることによってもこの開口ができることもあります。開口になってしまうと、舌を上顎と下顎の隙間から前に出してしまい開口を悪くしてしまします。
開口の治療は、開口になった原因を考えて対処していかなければなりません。
③ 咬み合わせが深い(過蓋咬合)
図4のように、上の前歯が深く咬んでいて、下の前歯があまり見えないか、全く見えない状態になったものをいいます。過蓋咬合になった原因を考えます。上顎が大きくて被っているように見えるのか、下顎が小さくて後退しているのかを考えます。過蓋咬合の場合は顎関節に異常が見られることが多いので、顎関節を前に移動させる必要があります、上顎の前歯を圧下させるのはとても難しいので、前歯の歯軸を変えて下顎を前に出してやり、臼歯部の咬合を高くして、過蓋咬合を改善します。
④ 出っ歯(上顎前突)
図5のような状態です。出っ歯・上顎前突と聞くと、上顎が前に出ているように聞こえます。本当に上顎の前歯が出ていても出っ歯に見えますし、下顎が後退していても出っ歯に見えます。このような場合に何を基準にしてどちらが出ているのか、引っ込んでいるのかを考えればよいのでしょうか。セファロといって頭を横から撮影する方法があって、いわゆる6歳臼歯の位置を調べるのです。その位置により上顎が出ていて上顎を引っ込めることが出来るのか、下顎を出して臼歯の咬み合わせを上げた方がよいのかを決めていきます。
⑤ 乱杭歯(叢生)
図6のような状態で、歯列不正で一番よくみられるタイプです。これまで述べてきた歯列不正に合併しています。上顎が劣成長で並びきれない状態です。上顎の成長期に鼻呼吸ができずに、上顎が成長不足の結果として現れます。また、親知らずに押されて乱れてくることもあります。小臼歯を抜歯する場合もありますが、抜歯して並べて、歯列弓が小さくするようではいけません。上顎の6歳臼歯の位置を精査して治療方針を決定していきます。
図6
⑥ すきっ歯(空隙歯列)
図7のような状態です。咬み合わせる力がとても大きい場合や、舌が大きい場合になることがあります。これまで見てきた歯列不正の矯正治療は、歯を並べるスペースをいかに確保するかを考えてきましたが、すきっ歯は隙間をなくすだけなので、矯正治療は楽なのですが、いわゆる後戻りがよく起きます。舌が大きい場合は舌の縮小術で舌を小さくしますが、舌は筋肉だけでできているので、元の大きさに戻ります。咬み合わせか強い場合は咬筋にボトックスという薬を打ち、筋力を弱めたりしますが、保定装置は一生手放せません。
図7
これまで、いろいろな不正咬合を見てきましたが、いろんなタイプが絡んできているケースがほとんどです。出っ歯の方で、前歯を引っ込めたいとご希望の方でも、歯は歯槽骨という骨の中にあります。矯正で歯を動かす場合、この歯槽骨の中でしか動かすことはできません。現在は、CTを撮影して、クリンチェックという治療計画に組み込むことで、治療の限界を知ることもできるようになりました。ぜひ歯並びが気になる方はご相談ください。
資料出典;ウミガメ株式会社運営のマウスピース矯正スタディーグループD/NEXセミナー資料